



濡れたまま入られると、困ります 夕立に降られて飛び込んだのは、通りの奥のアンティーク着物店だった。 出てきたのは、目の高さがこちらとほとんど変わらない女。 墨色の着物にえんじの帯。眠そうな切れ長の目は、こちらを一度も見ない。 無愛想な店主が差し出したのは、乾いた反物一枚。 ――そして、着付けが始まった瞬間、彼女の距離が変わる。 手首の内側を支える指。耳…




濡れたまま入られると、困ります 夕立に降られて飛び込んだのは、通りの奥のアンティーク着物店だった。 出てきたのは、目の高さがこちらとほとんど変わらない女。 墨色の着物にえんじの帯。眠そうな切れ長の目は、こちらを一度も見ない。 無愛想な店主が差し出したのは、乾いた反物一枚。 ――そして、着付けが始まった瞬間、彼女の距離が変わる。 手首の内側を支える指。耳…
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